特許庁オープンイノベーションポータルサイトに、ベンチャー企業と大手メーカーとの共同研究開発契約、その他契約に至る迄の考え方が掲載されていて「共同研究開発契約書」作成の参考になりますので、以下に一部概要を紹介します。
1.X社(新素材αを開発したスタートアップ)は、Y社(部品メーカー)に対し、新素材αの性能および耐久性に関する報告書を提出し、その後、Y社は、当該報告書を踏まえた社内検討を行い、X社との共同研究開発を行うことを決定した。
2.成果物の知的財産権の帰属について、以下のやりとりがなされた。
①Y社としては、事業戦略上、共同研究開発の成果を独占的に利用できる権利を確保することが必須である。できれば、共同研究開発の結果生じた成果物にかかる知的財産権については自社の単独帰属としたい。
②X社としては、自由度を確保して多数の企業とのアライアンスを実施し、市場を拡大して売上を増加させるために、成果物にかかる知的財産権は自社の単独帰属としたい。その場合であってもY社による成果物利用の用途を限定して、当該用途以外の成果物の他社への展開が阻害されない形であれば、当該用途においては成果物をY社のみが使用できるようにすることはやむを得ないと考えている。
③協議の結果、単独発明による成果物にかかる知的財産権は当該発明を行った当事者に単独帰属、共同研究開発の成果物にかかる知的財産権はX社に単独帰属させた上で、Y社に対して、一定期間・一定の領域において独占権を認める無償の通常実施権を設定することに双方合意した。
3.以下についても合意された。
①X社は、Y社との共同研究開発を開始した事実および得られた成果を(秘密保持義務に反しない範囲で)公表できる。
②研究開発の進め方としては、次のとおりとする。X社が技術者をY社に派遣し、X社およびY社の技術者が共同でY社の設備を用いて、新素材αを、量産品を念頭においた組成物に配合し、試作品を作成する。X社の技術者の立会いのもと、Y社は当該試作品について、性能検査や耐久試験を行う。そして、性能検査や耐久試験の結果をもとに、X社は、新素材αの表面処理を調整し、再度、組成物への配合、試作品の製造、検査を行う。
③試作品が製品としての目処がついた時点で、Y社は量産化のための原料の調達、量産ラインの準備等の作業を行う。
4.研究費の負担や研究成果に対する報酬の有無および支払条件について
①X社としては、共同研究開発の成果としての知的財産権について一定期間・一定の領域でY社に無償の独占的通常実施権を設定するのであれば、当該共同研究開発にかかる実費や人件費に加えて、研究成果に対する報酬も、事業化に至る前段階で、Y社に支払ってもらいたい。
②Y社としては、最終的に共同研究開発の成果を事業化した場合に何らかの報酬を支払うことには異論ないが、事業化に至る前段階においては実費および人件費のみの支払いとしたい。
③協議の結果、共同研究開発にかかる実費および人件費については、Y社が負担することに双方合意した。
④研究成果に対する報酬については、研究成果が出てから事業化に至るまでに、Y社内での協議検討や商流の調整等で相当程度の時間を要することから、事業化を待つことなく対価の一部を支払うことに、Y社が同意した。もっとも、事業化に至った場合にどの程度の収益が上がるのか(研究成果の価値)は、共同研究開発を開始する時点では予測することは困難であった。そこで、研究成果に対する報酬については、研究成果が出た時点で頭金としてまず相当額が支払われ、かつ、事業化(商品販売)までのロードマップを策定し、その過程に設定したマイルストーン毎に相当額が支払われるというスキームとすることに、双方合意した。
(出典)https://www.jpo.go.jp/support/general/open-innovation-portal/index.html