■米国の特許制度は、先発明主義から先公表型の先願主義に移行し(2013年3月)、発明者が発表しても1年間は、グレイスピリオド(開示が新規性を否定する先行技術にならない)が認められ。そのため、発明を公開してから1年以内に出願すれば、自己の公開により新規性なしとされることはない(One Year Rule)。
■特徴的な制度として、仮出願、ベストモード開示要件、公開制度、情報開示義務(Duty of Disclosure:IDS)、フロード(Fraud:虚偽)の場合の特許無効、特許後の訂正、抵触審査(Interference:先発明を争うもの)、再発行特許出願等がある。特許の有効期間は、出願日から原則20年である(1995/6/7以前の出願は登録日から17年又は出願日から20年の長い方)。取り敢えずの日本語出願や、仮出願制度(但し1年以内に正規の出願をすること)もある。
■出願明細書の請求項記載は、多重従属(マルチ:multiple dependent)をさらに多重従属する記載は認められない(マルチのマルチは不可)。なお、独立請求項が3つを越えると、料金が高くなる。請求項記載の構成要素の全てが図面に現れていることが必要である(日本と相違)。
■審査における指令(オフィスアクション: OA)には、限定要求(restriction requirement)は、1つの出願に複数の独立した発明が含まれるときに要求される。選択要求(election of species)は、上位概念(generic又はgenus)の発明に特許性が認めらないときに、下位概念(species)のいずれかの発明を選択することを要求される。102条(新規性)、103条(非自明性)、112条(記載不備)による拒絶がある。
■112条(記載不備)に関し、装置クレームの請求項に構造でなく機能的表現が含まれると、MPEP(米国特許審査基準)によれば、審査官が機能的限定を先行技術の固有の特徴(inherent characteristic)であると結論付けたならば、後は出願人が反証する必要がある。しかしながら、先行技術の装置が同等の構造を有する場合、先行技術との差異を機能面で主張しても認められる可能性は低い(日本と大きく相違)。
■OAに対して意見・補正書を提出し対応しても、拒絶理由が解消されない場合は最終(Final)拒絶理由通知となる。これに応答しても許可されない場合、Advisory Office Action(拒絶査定)となる。Advisory Office Actionが出され、これに不服の場合、RCE(Request for Continued Examination:継続審査請求)や、審判請求(Appeal)で応答する。なお、継続出願(Continuation Application:ルール1.53(b)による親出願維持のものと、ルール1.53(d)による親出願放棄のものがある)や、CIP出願(一部継続出願:新規事項が入るときの再出願)がある。
■新規性(102条)の規定は、先発明の思想が残っていて独特である。
§102.特許要件;新規性
(a) 新規性;先行技術…何人も下記の場合を除いて特許を受ける権利がある。
(1) クレーム発明が、クレーム発明の有効出願日(注:優先権主張日を含む)の前に、特許され、刊行物に記載され、又は公に使用され、販売され、又は、その他公衆に利用可能となった;又は
(2) クレーム発明が、151条(特許登録)により発行された特許に記載され、又は122(b)条により公開されたと見做される特許出願に記載され、ここに、その特許又は出願が他の発明者を挙げ、クレーム発明の有効出願日前に出願されている(注:日本の29条の2に相当)
(b) 例外
(1) クレーム発明の有効出願日の前1年以内の開示…クレーム発明の有効出願日前1年以内の開示は、以下の場合、(a)(1)のクレーム発明に対する先行技術にならない。
(A) その開示が、発明者によって直接乃至間接的に成された場合(注:Grace Period);又は
(B) 開示されたその主題が、そのような開示の前に、発明者又は共同発明者又は、当該開示主題を発明者又は共同発明者から直接乃至間接的に得た者によって公に開示されていた場合
(2) 出願及び特許中の開示…下記の場合、(a)(2)のクレーム発明に対する先行技術にならない。
(A) (先願に)開示された主題が、発明者又は共同発明者から直接乃至間接的に得られていた場合;
(B) (先願に)開示されたその主題が、(a)(2)の規定における有効出願の前に、発明者又は共同発明者又は、当該開示主題を発明者又は共同発明者から直接乃至間接的に得た者によって公に開示されていた場合(注:他人の先願よりも先に公表すると、先願より優位に立てる:先公表主義を規定);又は
(C) (先願に)開示されたその主題及びクレーム発明が、クレーム発明の有効出願日より前に、同じ者に所有されるか、同じ者に譲渡する義務があった場合。
(c) 共同研究契約の下での共有所有権…(b)(2)(C)の適用において、次の場合は、開示された主題及びクレーム発明は、同じ者に所有されるか、同じ者に譲渡する義務があるものと見做す…(注:同一所有者の例外の拡大)
(1) 開示された主題が開発され、クレーム発明がクレーム発明の有効出願日以前の共同研究契約の1以上の当事者により、又は、そのために成され、
(2) クレーム発明が、その共同研究契約の範囲内の活動の結果として成され、そして、
(3) クレーム発明の特許出願が、その共同研究契約の当事者の名前を開示するか、又は開示するように補正された場合
(d) 先行技術として有効な特許及び公開特許…特許又は出願が(a)(2)のクレーム発明に対する先行技術になるか否かの判断の目的のために、次の場合、その特許又は出願は有効に出願されたものと見做される…(注:先願の後願排除基準日)
(1) もし(下記)パラグラフ(2)が適用されない場合、その特許又は出願の実際の出願日、又は、
(2) もし特許及び出願が、119条(外国優先権)、365(a)条(PCT出願に基づく優先権)又は365(b)条(外国優先権を伴うPCT出願)による優先権を有する場合、又は120条(継続出願)、121条(分割出願)又は365(c)条(継続出願としてのPCT出願等)により、1以上の先に出願された特許出願に基づき先の出願の利益を得る場合は、その主題を開示する出願の最先の出願日 (注:Hilmer Doctrineはなくなる)
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